2008年11月01日

[Book]残酷な楽園―ライフ・イズ・シット・サンドイッチ

残酷な楽園―ライフ・イズ・シット・サンドイッチ(小学館、著者:降旗学)

残酷な楽園―ライフ・イズ・シット・サンドイッチ
降籏 学
小学館
売り上げランキング: 207812
おすすめ度の平均: 4.0
4 オーストラリアの影の部分を炙り出した書


以下、目次です(amazonのHPから引用させていただきました)。
目次
ドールブラジャーとシットダウンマネー
コミュニティの中で歪んでゆく常識
潤沢なオアシスのすさんだ日常
世界でいちばん熱い夏
残骸の楽園
1000対1の抵抗
赤い触手と黄色い禍
沈黙の陽のあたる場所
パワー・トゥー・ザ・ピープル
もうひとつのベトナム戦争
犯罪大通り


以前、当ブログのこのエントリで紹介したNBonline デキルヤツの条件の著者 降旗さんの第3回「週刊ポスト」「SAPIO」21世紀国際ノンフィクション大賞優秀作を受賞したデビュー作。

最近の降旗さんのコラムNBonline シネマde青春で一部が紹介されており、ぜひにと思い読んでみました。

読みながらドーンと感じてしまう作品でした。
内容は華やかなイメージのあるオーストラリアが内包する(当時はしていた、でしょうか)陰の部分にスポットライトをあてたノンフィクション。
アボリジニの実態、徴兵制度、旧宗主国である英国による核実験、ベトナム戦争に対する反戦デモ、ベトナム戦争からの帰還兵のその後、麻薬などなどがテーマとなっています。

足を目いっぱい使ってオーストラリアで徹底的に、綿密に取材されたんだろうなあ、ということがリアリティとして伝わってきます。

これまでの私のオーストラリアのイメージは、本書内にもある「観光大国」「自然の楽園」としてのオーストラリアのみ。
それだけにその落差に驚いたとともに、暗部を見せられたようでショックでもありました。

本書にはちょっと考えれば、もしくは調べればわかることも多く書いてあります。
そういう意味では、よく言われることですが、自分で当たり前だと思っていることが本当にそうなのか、考え、確かめる重要性を改めて感じました。
(もちろん少しくらいではわからないことも多いですが。例えば、読了後にWikipediaでアボリジニを調べて読んでみましたが、一般的に知られている範囲までしか書いてありませんでした。本書ではもっと突っ込んで書いてあります。)

たまに考えるのですが、私がこれまで習ってきた歴史(日本史でも世界史でも)って、実は完全な創作なんじゃないか、と思った感覚にやや似ています。
例えば、1900年くらいに全世界で今後過去の歴史は全てこうだったことにする、と取り決めて、一斉にせーので変えた可能性はないの?とか思ったりすることがあります。
(自分でも突拍子のない話だとわかっていますが…)

私個人の中では、突拍子が無いながらも一度考えてみることも大事、まだまだ知っているようで知らないこと、気がついているようで気がついていないことが多々あるんだ、と改めて思い知らされた本でした。

閑話休題。
読みながら思ったことは2つ。

1つ目は、アボリジニに関して、記憶に新しいシドニー五輪の聖火最終走者として注目を集めたキャシー・フリーマンのことです。
彼女は、シドニー五輪の前のアトランタで銀メダルを取っていてシドニーでは地元期待の金候補だったこと、そしてアボリジニでありオーストラリアの先住民との融合(人種差別がない)象徴として、聖火をともすことになった、と理解していました。

果たしてこの時のキャシー・フリーマンの心情は、そしてアボリジニ、オーストラリア人の心情はどうだったのかな、ということ。
本書が書かれたのは、1996年(ただ受賞年ですから、取材自体は94年か95年でしょうか)、シドニー五輪は2000年ですからわずか4,5年後のこと。

本書を読んだ限りでは、一朝一夕に好転するものでもないだけに、考えてしまいます。
(穿った見方をすればオーストラリア政府のPRでしかないかった、とも。。まあ五輪は多かれ少なかれそういった側面を持っていると思いますが)

2つ目は、全般的な話になりますが、現在のオーストラリアはどうなのか、ということ。
前述したとおり、本書の執筆(取材)から12年経って状況は変わったのか、それとも変わっていないのか、ということ。

私はオーストラリアに行ったことがないため、そもそも本書が正しいのか、そこまでではないのか、判断が難しいところがあります。
それを確かめに(観光メインで行ってしまうとは思いますが、そういった側面があることも認識しつつ)、オーストラリアにいつか行きたいな、と思いました。
(これで行動力があって仕事の都合がついて、お金があれば即飛行機のチケットを抑えるところですが。。)

それにしても、NBonlineのコラムとは趣がだいぶ違い、驚きました。
「本業」の凄味を見せられたような。
描写の細かさや、視点は相通ずるものがあると感じましたが。

欲を言えばChapter3などは非常に短かったため、さらに広げて読みたいな、と。
(実際、アボリジニやベトナム戦争については様々な角度から描かれていました)
もっとも、著者の意図を私がどこまで読み説けたかというと甚だ心もとないところですが。

願わくば著者による本書の続編が読みたいと思ったり。
その後、ということで。

NBonlineでのコラムの読者の方、重厚なノンフィクションを読みたいと思っていらっしゃる方にオススメです。

NBonline シネマde青春(http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20081001/172295/)
NBonline デキルヤツの条件(http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20080305/148977/)
NBonline 長目飛耳(http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20070531/126077/)


posted by Guinness好き at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Book | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック