アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 (岩波新書)
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松本 仁一
岩波書店
売り上げランキング: 779
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おすすめ度の平均:
なんとも悩ましい問題絶望大陸アフリカ
アフリカの新しい動きを紹介するレポート。バランスに疑問も。
発展途上国の今
モザイク大陸の「現状」
以下、目次です。
目次
はじめに
序 章 アフリカの今―ルムンバの夢はどこへ行ったか
ワニの川を渡って/1か月働いて卵2ダース/人口の4分の1が南アへ逃げていった/16万%を超えるインフレ率…
第1章 国を壊したのは誰か―ジンバブエで
突然の「価格半減令」/ハンバーガー1個が3000万Zドル/医師も薬剤師も国外へ出ていった…/順調だった農業育成/「雨が降ったら開けろ」―農事普及員の活躍/政府が農業に無関心になった…
第2章 危機に瀕する「安全」と「安心」―南アフリカ共和国で
政権の腐敗と治安の悪化/ヨハネスブルクのパトカーに同乗する/警官殺しが月15件/都市に流れ込む貧困層/7年後、再びパトカーで/新手の犯罪、カージャック/殺人は一日50人…
第3章 アフリカの中国人―南アで、アンゴラで、スーダンで
「新植民地」システムの新しい主役/ギャングに狙われた中国人の店/同郷人頼りに、次々と海外へ/商機を黒人客に求める/「妻の幽霊が出るんだ」/残された借金4000ドルの後始末/ただ一人の中国人警官…
第4章 国から逃げ出す人々―パリで、歌舞伎町で
マリの村人、パリ郊外へ/パリに住む農協役員たち/パリ大学を出て夜警に/アフリカから新宿・歌舞伎町へ/仕入れてもいない酒に23万円の請求/在日アフリカ人の4人に1人がナイジェリアから…
第5章 「人々の自立」をめざして―農村で、都市スラムで
「やる気」をうながすシステムづくり/「ただの援助」はしない/村人が自分で考える/政府の警戒と妨害/学校をつくる人々/ソウェトにできたレストラン/取り残された貧困地区で/「希望の山」の若者たち…
第6章 政府ではなく、人々に目を向ける―ケニアで、ウガンダで、セネガルで
マカダミアナッツで年5000万ドル/失敗と改良を重ねながら/遅刻・無断欠勤なし、そして「給料遅配なし」/働く張り合いをつくる制度/「私なしでやっていけます」/ウガンダ最大のシャツ・メーカー…
あとがき
(岩波書店HPから引用させていただきました)
◆概要&感想◆
淡々とではありますが、生々しく深い一冊でした。
本書は、現在のアフリカの今の姿が描かれています。
アフリカの状態というのは、メディアなどを通じて断片的には入ってきます。
が、どうしてもブツ切りの情報だったので、一度まとまったものを読んでみたいと思っていました。
実際に読んでみて、戦慄し、憤りを感じるとともに、どうすれば変わるのか、と考え込んでしまいました。
一口に「アフリカは遅れている」といった趣旨を話すのは簡単ですが、なぜそうなったのか、現状どうなのか、現地ではどう考えられているのかといった観点を本書は丁寧に描いています。
同時にそれは、アフリカにおける絶望的な状況を知ることでもあります。
救いは、第5章、第6章でその現状を打破しようとしているアフリカの人々とその周囲についても言及があるところ。
原丈人さんを始めとする色々な方が仰っていたり、実践されているように、結局最後は現地の人々が自分の足で立てるようにならなければ、どんなに各国政府が援助したりしても仕方がないわけで。
NGOなどに代表されるそういった動きの大切さも改めて感じました。
あと、考えてみればわかることですが、現在のアフリカの国境線は、植民地時代に宗主国が勝手に引いた国境線であり、現地の人からすると何ら意味を持っていない、という事実。
これには自分の考えの足りなさを痛感しました。
見えているものがそのとおりとは限らないという顕著な一例だと思います。
まだまだ多様な可能性を秘めているアフリカだけに、今後も各国の利害が様々なところで絡み合うでしょうが、そういった報道に接する際に本書のような本を読んでいるかどうかで捉え方も変わるかと。
今のアフリカの一端を知るのにこの上ない一冊かと。
本書は著者にとって中間レポートという位置づけのようですが、ぜひ著者には、本書の拡大版としての近代アフリカ史のような著書を書いてほしいところです。
◆気付き◆
・アフリカの国境は宗主国が決めたもの
◆学び◆
・国の基盤は安全と農業
・国を壊すのは簡単、作るのは困難
・国を作るのは人々
◆オススメしたい方◆
・アフリカの現状に興味がある方
・独立後のアフリカの歩みに興味がある方
・世界を知りたい方
■関連リンク■
・本書紹介ページ(岩波書店HP内)
■関連過去エントリ■
・[Book]21世紀の国富論