ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)
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堤 未果
岩波書店
売り上げランキング: 174
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おすすめ度の平均:
■アメリカって何だろう?に応える秀作。はじめに結論ありき、の本。ラフ・スケッチ。
読むべき!
現代世界の問題を知るならこれを読むべき
「プレカリアート」のアメリカ版
目次
プロローグ
第1章
貧困が生み出す肥満国民
新自由主義登場によって失われたアメリカの中流家庭/なぜ貧困児童に肥満児が多いのか/フードスタンプで暮らす人々/アメリカ国内の飢餓人口
コラム(1) 間違いだらけの肥満児対策
第2章
民営化による国内難民と自由化による経済難民
人災だったハリケーン・カトリーナ/「民営化」の罠/棄民となった被災者たち/「再建」ではなく「削除」されたニューオーリンズの貧困地域/学校の民営化/「自由競争」が生み出す経済難民たち
コラム(2) ニューオーリンズの目に見えぬ宝
第3章
一度の病気で貧困層に転落する人々
世界一高い医療費で破産する中間層/日帰り出産する妊婦たち/競争による効率主義に追いつめられる医師たち/破綻していくアメリカの公的医療支援/株式会社化する病院/笑わない看護師たち/急増する医療過誤/急増する無保険者たち
コラム(3) 不安の「フード・ファディズム」
第4章
出口をふさがれる若者たち
「落ちこぼれゼロ法」という名の裏口徴兵政策/経済的な徴兵制/ノルマに圧迫されるリクルーターたち/見えない高校生勧誘システム「JROTC」/民営化される学資ローン/軍の第二のターゲットはコミュニティ・カレッジの学生/カード地獄に陥る学生たち/学資ローン返済免除プログラム/魅惑のオンライン・ゲーム「アメリカズ・アーミー」/入隊しても貧困から抜け出せない/帰還後にはホームレスに
コラム(4) 誰がメディアの裏側にいるのか?
第5章
世界中のワーキングプアが支える「民営化された戦争」
「素晴らしいお仕事の話があるんですがね」/「これは戦争ではなく派遣という純粋なビジネスです」/ターゲットは世界中の貧困層/戦争で潤う民間戦争請負会社/見えない「傭兵」/一元化される個人情報と国民監視体制/国民身分証法/州兵としてイラク戦争を支えた日本人/「これは戦争だ」という実感
コラム(5) テロより怖い民営化
エピローグ
初出一覧
あとがき
(岩波書店HPから引用させていただきました)
◆概要&感想◆
とかく「光」の面が強調されがちな(最近はそうでもないかもしれませんが)アメリカの「影」の部分に焦点が当てられた一冊。
第2章の話は若干ではありますが、聞いたことがありましたが、それ以外でもこんなに様々な面で疲弊していたとは…
本書全体のテーマとして、「民営化」というのがありますが、これに関わる全ての人(賛成派、反対派含めて)に読んでほしいな、と。
これまで私は、政府に任せるくらいなら、民営化したほうがたいがいのことはよくなると思っていました。
が、本書を読んで考えの浅さを知りました。
日本が最も苦手そうな分野ですが、民営化するのかしないのか、正々堂々と出せる議論でその是非を検証し、骨抜きにされない制度作りが行われないと本書のような話になることを痛感。
なぜこういった話が報道からは出ないのか、それも不思議な点。
表層的な話に終始するのではなく、こういった話こそ報道されるべきなのでは、と思ってしまいました。
じっくり調査して、報道する、そんなメディアでなければ今後は生き残っていけないとも思うのですが。
とは言いつつ、私自信そのような姿勢で情報に接することができていなかったので、そのあたりは自戒を込めて。
その一環というわけではないですが、マイケルムーアの「シッコ SiCKO」も見てみようと思います。
もちろんマイケルムーアなのでバイアスがかかっていることを意識しつつ。
(特に日本の)メディアが報じているのはあくまで一面だけであり、それが真の姿とは限らない、ということを改めて肝に銘じました。
貴重な一冊だと思います。
こんな良書を今年はたくさん読みたいですね。
◆気付き◆
・「民営化」は万能ではない
・日本では調査報道が極端に少ないのでは
・なぜ他国の実例が日本ではあまり出てこないのか
◆学び◆
・国の根幹に関わる制度については、長いスパンを考慮した検証が必須
・メディアはある一面しか報道しない
◆オススメしたい方◆
・アメリカという国に興味がある方
・これからアメリカに行かれる方
・民営化に携わる方
・メディアに関わる方
■関連リンク■
・堤未果のブログ(著者堤未果氏ブログ )
■関連過去エントリ■
・[Book]アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 (岩波新書)