2009年03月21日

[Book]ジャーナリズム崩壊

ジャーナリズム崩壊(幻冬舎、著者:上杉 隆)
ジャーナリズム崩壊 (幻冬舎新書)
上杉 隆
幻冬舎
売り上げランキング: 8108
おすすめ度の平均: 4.0
4 権威あるいは権力に寄り添わないジャーナリズム論
4 出羽守さまが斬る!記者クラブを中心とした日本のジャーナリズムのおかしさを
4 ここもおかしいよ、日本のマスコミって感じか。。。しかし、おかしすぎだろ
5 世界に名だたる日本の恥、“記者クラブ”が、新書でまとめられてます。
5 最近、秋篠宮殿下のご長男・悠仁さまがどうしてマスコミに出てこないのかもわかります

目次
第1章 日本にジャーナリズムは存在するか?(空想でしかない「客観報道」、メモ合わせ、自由な言論を許さないメディア、編集と経営、しばり、癒着)
第2章 お笑い記者クラブ(笑われる日本人記者、メディア界のアパルトヘイト)
第3章 ジャーナリストの誇りと責任(署名記事、実名報道、均一化したエリート記者たち)
第4章 記者クラブとは何か(記者クラブの誕生、日米メディアをめぐる誤解、英訳・キシャクラブ、都庁記者クラブの場合)
第5章 健全なジャーナリズムとは(アフガニスタン・ルール、過ちを認めない新聞、日本新聞協会の見解)
amazonから引用させていただきました)

◆本書を読む視点◆
・日本のジャーナリズムと日本以外のジャーナリズムの違うのか?

◆本書を一言で表すと◆
・悲しい日本のメディアの現実(著者から見た視点)

◆概要&感想◆
ここに書いてあることが事実なのであれば(かなりの部分が事実なのだと思いますが)、非常に悲しいというか情けないというか…

主に「記者クラブ」や、フリーランスを除く記者の方々のいかにも「日本的」な行動がつぶさに描かれています。
なかなか表に出てこない世界だけに、メディアというある種閉鎖的な世界から、広く世間に向けたリーク、と捉えることもできると思います。
本書を世に出すことで、さぞ組織所属の同業者からは疎まれるであろうこと間違いなしの一冊かと。

メディアの世界が舞台なので、報じる側のおひざ元ということもあり、最もメディアが報じない世界の話。
特に日本のメディア内では、お互いの足を引っ張る報道はご法度、極めて甘い対応をするという不文律があるようですのでなおさらなのかな、と。

そんな世界で、中からも外からも見ている筆者がこれまでの経験を元にした考えをオープンにぶつけていて、非常に面白いです。

例えば最近よく聞く「記者クラブ」の閉鎖性。
日本の報道における諸悪の根源のような言い方をよくされますが、筆者としては一定の効用は認めていて、廃止ではなく、解放がよいと考えている、など。

読後思ったことは、逆方向からの意見を聞きたい、ということ。

筆者は、議員秘書という政治の世界から、ニューヨークタイムズという媒体の記者を経てフリーランスとなっています。
議員秘書というメディアと付き合う立場、そしてニューヨークタイムズ記者及びフリーランスといういわゆる日本のメディア村からはやや外れた場所に位置するメディアとしての立場を経験されています。

第三者では無いので当然といえば当然ですが、視点がある方向に固定されている、と感じなくもありません。
とはいえ、恐らく本書に書かれていることがほぼそのまま日本におけるメディアの実態なのだと思いますが、それでも異なる立場の方(例えば日本のメディア所属一筋の方など)の意見を聞きたくもあります。
もちろん記名で(笑)

もう1点感じたこと。
個人的には、日本のメディアによる報道はほぼ皆が同じ方向、同じ姿勢で報道していると感じるため、ある方向に突き進んだ時の危うさを感じています。
煽りとか偏向報道ではないか、と感じることもありますし。

ニュースのソースとしてもちろん見ていますが、その反面皆が同じ記事を書くのではなく、著者が本書内に書かれているとおり、通信社としての仕事とその記事を深く掘り下げるような調査報道とに分かれていいと思っています。
というか、そうなってほしいと思っています。

そもそも日本の場合は、調査報道の部分は週刊誌や経済誌などが担っているから住み分けはできている、という声もあるかもしれませんが、海外では多様なメディアで調査報道をやっているわけで。

現在ネットで流通している情報もソースは従来メディアであることは承知しています。
しかし今の仕組みのままでは、発表報道発の情報ではあまり価値をつけられないとも思います。
少なくとも多くのメディアで、同じ発表報道を行っても共倒れになるのではないか、と。

情報に付加価値をつけて、価値のある情報を扱うことで、メディアとしての価値を上げるという意味で、日本のメディアでももっと調査報道が活発になってもいいのではないかな、と思ったりします。
それができれば、例えばネットで脅かされるメディアではなく、ネットを利用できるメディアといったように立ち位置の変換を行うための一つの方策になり得るのではないでしょうか。

現在の日本のメディアが抱える問題点を浮き彫りにしているという点で勉強になった一冊でした。

◆気になったポイント◆
アフガニスタン・ルール

ニューヨークタイムスとしての姿勢が垣間見られる話だと思います。
個人的には日本の各メディアにもこうしたこだわりがあると嬉しいなぁ、と思ったりもします。
これが一つの個性とも言えると思うので。

◆オススメしたい方◆
・海外メディアから見た日本のメディアに興味がある方
・記者クラブに興味がある方
・日本の報道の舞台裏に興味がある方
・メディアを目指している方

■関連リンク■
・本書紹介ページ(幻冬舎HP内)
・週刊 上杉隆(著者 上杉隆氏連載(ダイヤモンドオンライン内))

■関連過去エントリ■
・[Book]ラーメン屋vs.マクドナルド―エコノミストが読み解く日米の深層 (新潮新書)
・[Book]次世代マーケティングプラットフォーム



posted by Guinness好き at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Book | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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