チーズの値段から未来が見える
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上野 泰也
祥伝社
売り上げランキング: 111167
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経済予測のプロが未来予測の方法を教えてくれる読むべき価値は大いにあり
「速い」「安い(コンパクト)」「上手い」!
経済の見方に関するフレームワーク
正攻法の経済予測を勧める
目次
第1章 経済は誰が動かしているのか?
・経済の「主役」は自分である
・「経済を見る眼」を養う
・庶民の実感が、プロをしのぐ――チーズの値段と日本経済の関係
・軸となる考え方を身につけることの重要性
第2章 経済を見ていく基礎知識
・経済シナリオ構築に必要な4つのポイントとは?
・日本経済「3つの特徴」
・経済を見ていく基礎1 景気――経済の「牽引役」はなにか
・経済を見ていく基礎2 物価――根強いデフレ圧力と「悪い」物価上昇
・経済を見ていく基礎3 財政政策――拡張か? 緊縮か?
・経済を見ていく基礎4 日銀の金融政策――その特徴と金利のメカニズム
・経済指標をどう読むか――予測の基礎ツールを使いこなす
第3章 チーズの値段から未来が見える――日常生活からわかる経済
1 消費者の目線で経済をみる
2 なぜ地域によってタクシーの初乗り運賃が違うのか?
3 チーズの値段から未来が見える
4 ハンバーガーの値段比較にみる通貨の強弱
5 1円玉は必要ない?――日本人の「金銭感覚」と消費税のゆくえ
6 企業トップの「年頭所感」で読む日本の景気
7 勝率8割! ドル/円相場を予測する「1月効果説」
8 ゴールデンウィーク・お正月の人出と景気・株価の関係
9 「団塊の世代引退で消費急増」説は本当か?
10 公務員志望者数と景気の関係
11 揺らぐ日本経済の「土台」――景気回復を感じられない中小企業の実態
12 マーケットの核心を突く「小泉語録」と歴代内閣の「成績」
13 コメと小麦の価格動向から読みとく物価の動き
14 七五三で考える企業の「価値創造」
第4章 エコノミストが教える「予測」の技術
・予測力を鍛える「3つのステップ」
・ステップ1「情報収集」――いかに効率よく材料を集めるか
・「裏ネタ」を知る必要はない
・ステップ2「フィルタリング」――本当に必要な情報を見極める
・情報整理はテーマ別より時系列で
・データ入力は必ず自分の手でする
・ステップ3「シナリオ構築」――集めた情報をいかに組み立てるか
・4つのポイントの組み合わせとシナリオ構築の「コツ」
・日本経済シナリオの骨格をどうつくるか
第5章 実践!「予想」の練習問題
【初級編】
Q1 お盆や年末年始の宿泊料金が高い理由は?
Q2 高級ホテルの休日宿泊料が直前に安くなるのはなぜ?
Q3 インターネット上の価格情報は物価にどう影響するか?
Q4 原油上昇でクリーニングの値段を上げるべきか?
Q5 イベントの経済効果は本当か?
Q6 企業が儲かれば株価は必ず上がる?
【応用編】
Q7 日本株の「出遅れ感」は正しいか?
Q8 米雇用統計の強弱を「星取表」から予想する
Q9 米同時テロ事件の経済的影響はどの程度だったか
Q10 中国の「米国債・ドル大量売却」説は本当?
(amazonから引用させていただきました)
◆本書を読む視点◆
・エコノミストはどのような切り口で世の中を見ているのか
◆本書を一言で表すと◆
・日々の生活の中から世の中と経済を見るための指南
◆概要&感想◆
気鋭のエコノミスト(エコミストランキング6年間連続1位だそうです)による、世の中と経済の見方を指南する一冊。
エコノミストとしてどのように世の中を「予測」しているのか、その技術についてと実際の見方について書かれています。
このように書くと難しい本のように見えますが、本書の視点は特別なことではなく、一貫して生活の中から世の中や経済を見ることの重要性とその方法について。
そのあたりのお話が、具体的な話として第1章と第3章に特に集約されています。
第1章で、一人一人が経済的な感覚、自覚を持つことの重要性と、普段の実感の意外な(?)正確性に触れています。
考えてみれば、私たち一人一人の経済活動の集大成が経済全体になるわけで、普段忘れがちではありますが、その私たちの実感というのは思っている以上に経済の先行きに影響を及ぼしているのかもしれません。
まして、これだけクチコミなどの人の思いが伝わりやすい世の中。
発言力が強い人が、ごくごく普通に生活しています。
ムードの伝播力というのは侮れないことを考えても、私たち自身が経済を一部の世界の話として見るのではなく、私たちが動かせる対象として見る必要があるのだと思います。
第3章では、エコノミストが教える「日常から経済を感じる」具体例。
表題にあるチーズの値段、ビックマックの価格比較、公務員の志望者数、GWやお正月の人出などと経済の関係をわかりやすく解説しています。
この難しいことをわかりやすく説明している点とその語り口、先日のエントリ「[Book]クラウドコンピューティング入門 (できるポケット+)」の小林さんに通ずるものがある気がします。
ともかくアレルギーが出やすい経済絡みの内容をこれだけ平易に書かれていることに驚きです。
第2章と第4章では具体的なエコノミストの技術についての紹介。
いずれも覚えておくことでニュースに接したり、新聞を読む際に考える糸口になる点ばかり。
経済について考えるとっかかりとしても良いと思います。
予測に必要な4つのポイント
景気 経済の「牽引役」はなにか
物価 根強いデフレ圧力と「悪い」物価上昇
財政政策 拡張か? 緊縮か?
日銀の金融政策 その特徴と金利のメカニズム
特にこの予測に必要な4つのポイントについて着目していると大きな経済の流れが掴めると思います。
一種のフレームワークとも言えるかもしれません。
この4つのポイントをフレームワークとして持つことで、経済ニュースに触れた折にもそれぞれの要素にどのような影響を及ぼすのか、などの考えるためのモノサシができるかと。
日々の経済の動きについて考えられるようになるための土台作りに一役買う一冊だと思います。
◆気になったポイント◆
庶民の実感が、プロをしのぐ
決して遠い世界の話でなく、身近な話なのだということですね。
日本経済の「3つの特徴」
輸出主導
根強いデフレ圧力
格差型景気
日本経済を把握する上でカギとなる3つの特徴。
それぞれわかりやすく解説されています。
経済指標を見る上での3つの注意点
(1)矛盾する指標の読み方
(2)時系列による指標の読み方
(3)ミクロとマクロの違い
「予測」3つのステップ
情報収集
フィルタリング
シナリオ構築
本書では3つのステップ、特徴、4つのポイントとうまく焦点を絞って示した上で、それぞれについて説明がなされる、というスタイルを取っています。
このあたりもわかりやすく、すんなり入ってくるポイントの一つかと。
経済は「素直」であり、「ひっかけ」はない。
何度か出てくる表現。
著者の信念の一つなのかな、とも思いました。
見る側が様々な見方をするので、結果的に「ひっかけ」られることはあっても、経済自体がひっかけようとしているわけではない、ということですね。
データ入力は必ず自分の手でする
手で入力したデータは忘れにくく、印象に残る、とのこと。
手を動かすことで得られるものがあるという点は覚えておきたいな、と。
景気に関連する事象には上振れ・下振れが常につきまとうことを念頭に置いて、物事を見るようにしている。人間のやることなのだから、好調なときには楽観論の行き過ぎが、不調なときには悲観論の行き過ぎが起こりやすい。
人の心理と経済(景気)は無関係ではなく、むしろ作用し易いことを示唆しています。
このあたりは大前研一氏が良く言っている心理経済学に通じるものがありそうです。
◆オススメしたい方◆
・経済の見方についてわかりやすく書かれた本を読みたい方
・エコノミストに興味がある方
・日常と経済の関係に興味がある方
・トップエコノミストの著者上野氏に興味がある方
・経済を見るためのフレームワークを身につけたい方
■関連リンク■
・本書紹介ページ(祥伝社HP内)
■関連過去エントリ■
・[Book]すべての経済はバブルに通じる
・[Book]投資銀行青春白書