2009年06月03日

[Book]クラウドの衝撃

クラウドの衝撃――IT史上最大の創造的破壊が始まった(東洋経済新報社、著者:城田 真琴)
クラウドの衝撃――IT史上最大の創造的破壊が始まった
野村総合研究所 城田 真琴
東洋経済新報社
売り上げランキング: 849
おすすめ度の平均:
4.0
5 デファクトスタンダードになるのかも
4 ■最新の業界動向に短時間でキャッチアップできます!
5 世の中が変わるかもしれませんね
4 わかりやすいです
4 初心者の視点から
目次
第1章 姿を見せ始めた次世代コンピューティング・モデル
第2章 雲の中身はどうなっているのか
第3章 ネット企業がリードするクラウド・コンピューティング
第4章 ICT業界の巨人たちはネット企業に追いつけるか
第5章 クラウド・コンピューティング時代の企業IT戦略
第6章 クラウド・コンピューティングで何が変わるのか
第7章 クラウド・コンピューティング時代へ向けて超えるべきキャズム
東洋経済新報社HPから引用させていただきました)

◆本書を読む視点◆
・クラウド・コンピューティングがビジネスにもたらす変化は?

◆本書を一言で表すと◆
・クラウド・コンピューティング時代の企業やビジネスへのインパクトを綴った一冊

◆概要&感想◆
クラウドコンピューティングについては、類似書として「クラウドコンピューティング入門 (できるポケット+)」をエントリしました。

クラウドコンピューティングについての基本的な概念の説明や、Google、MS、セールスフォースなどといった先鋭的な企業の現状など重なる部分もあります。

ただ、「クラウドコンピューティング入門」は「できるポケット+」シリーズということもあり、基本的な理解に加えて、実際にクラウドコンピューティングの世界を実践し、実感するための一冊になっています。

一方で、本書はクラウドコンピューティングが、ビジネスに及ぼす影響や旧来の企業も含めた今後の展望に焦点をあてています。

個人レベルでは私も大いにクラウドコンピューティングの恩恵を受けています。
そしてクラウドコンピューティングがこのまま個人だけでなく、企業レベルでも順調に浸透した場合に、コンピュータシステムの提供サイドと発注サイド双方がどのような影響を受け、今後はどのような戦略を取るべきかがよくわかります。

本書を読むと今後のITに関わるビジネスがさらに大変動を起こす可能性が高いことがよくわかります。
第一に、既存の大手と言われる企業も、クラウドコンピューティングに関わる戦略次第で生き残るか否かが決まります。

GoogleやMS、セールスフォースといった既に基盤を整えている企業は問題ありません。
問題は、これからクラウドコンピューティングにシフト転換する、もしくは現在整えている最中の企業。

ハードウェアが売れなくなり、ITのプラットフォームはクラウドから提供され、ITサービスですら定型のものはクラウドからやってくる、となるとよほどの覚悟が無いと生き残れないことは必至だと思います。

いち早くIBMはその空気を察知して、ITでまだ未開とも言える南アフリカの地に総計17億ドル以上を投じて基盤を作るとのこと。
これくらいの覚悟をできないと、そもそもクラウドコンピューティング時代のレースに参加することもできないのではないでしょうか。

PaaS、Haas、SaaSのいずれかに関わらなければ、残るのはほんの一握りの企業となることは明白な気がします。
特にハードウェアベンダーとシステムインテグレーターと呼ばれる企業は大きな転換期に入っていることを自覚でき、かつ素早く方向転換できるかどうかで、今後生き残れるかどうかが変わってきます。

そしてITサービスのユーザーからすると大きなメリットが。
サービスのレベル感によって、適正な選択をすることで臨機応変なサービスの拡張であったり、コスト削減が図れます。
うまく使うことでこれまでよりもITに悩まされることが少なくなります。

ただこれらは本書内でも言われているとおり、
少なくとも現時点では、「銀行に現金を預けるほどの信頼性」はまだない
という現状を打破することができれば、の話。

良く言われるグリーンITへの対応とともに、その信頼性をいかに確保していくか、その点にも注目してこれからのIT業界の動向を見ていきたいと思います。

◆気になったポイント◆
個々のハードウェアの障害発生は当然
可用性やパフォーマンスに影響を与えることなく、障害対応をいわば当たり前のケースとして取り扱えるように構築されている必要がある
もうこの時点で従来とは考え方が違います。
バックアップうんぬん以前のお話ですし。
障害対応は当たり前のケース、それでもシステム全体が使えれば問題なし、という境地ですね。
これからのシステム評価では今まで以上に「可用性」が重要になることを感じます。
システム管理、ネットワーク、そして負荷分散に関する技術を、おそらくは検索アルゴリズムそのものよりも厳重に保護している。
コスト優位性が、主にこれらのプロセスを自動化したことによってもたらされているからだ
同時に
北京やヨハネスブルグのセンターに関しては、中国やサハラ以南のアフリカ地区の「情報発電所」として機能するコンピューティング基盤としての意味合いが強い。
1億2000万ドル さらに16億ドルを投資
大胆ながらその意思を感じるIBMの施策、驚きました。
同時にこれくらいやらないといけない、という危機感の表れでもあります。

さまざまなITリソースがサービスとして利用可能になる中で、「何をどこまでクラウド・コンピューティング・サービスに頼るのがベストなのか」という判断基準の確立が今後のIT戦略を練る上で重要となってくる。
クラウドコンピューティング時代にユーザー企業が最も考えるべきこと。
データセンターに収容されるサーバについても、グーグル同様、マザーボードの設計レベルから自社で独自にデザインするようになっている。
データセンターがその中枢として大きな役割を果たす。
これをやられてしまうとハードウェアメーカはもう従うしかありません。
世界におけるサーバ数に占めるデータセンターに収容されるサーバの割合がどのように推移するのか、そんな指標(があれば)ウォッチしておきたいところ。
IT基盤の構築を売りにしてきたシステム・インテグレータにとって、PaaSは大きな脅威となる。
自分たちのコアであったIT基盤の構築というビジネスが奪われてしまうだけでなく、システム稼働後の運用・保守といううまみのあるビジネスまで消滅してしまうからだ。
システムインテグレータにとっては確かに大打撃。
そしてそれは不可避な動きなだけにどのように舵を取るのかが問われます。
クラウド・コンピューティングがあらためて問いかける、「適切なサービスレベルで必要な機能が利用できれば、その構成や所在は問題ではないだろう」という考え方は非常に理にかなったものだ
企業からするとこの考え方に尽きるのではないでしょうか。
そのサービスにとっての適切なサービスレベルをクラウドコンピューティングでは満たせない、ということであれば、従来どおり個別にITサービスを作ればいいのですし、満たせるのであればクラウドコンピューティングでも良い、となるはず。
世の中の流れがこの考え方に賛同するのか、そうならないのか、楽しみです。
2,3年後このエントリを見ると、とっくに大きな流れが決まっていて、そんなの○○になるに決まっていたじゃない、となるんでしょうね…

◆オススメしたい方◆
・クラウドコンピューティングについて勉強したい方
・クラウドコンピューティングのビジネスに与える影響を知りたい方
・企業でITサービスの担当をしている方
・今後のIT業界の流れに興味がある方

■関連リンク■
本書紹介ページ(東洋経済新報社HP内)

■関連過去エントリ■
[Book]クラウドコンピューティング入門 (できるポケット+)
[Book]情報力
[Book]プラネット・グーグル


posted by Guinness好き at 23:56| Comment(0) | TrackBack(1) | Book | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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